第二章 企業取引の法務
第二節 契約の成立
レベル2 権利・義務の主体
物の売買や物の製作依頼、事務処理の依頼などの取引において売主や買主などの当時者となる者を、権利・義務の主体といいます。
権利・義務の主体には、個人(人)と、個人とは別の独立した地位を持つ法人とがあります。ここでは、権利・義務の主体のうち、個人(人)とその活動について説明し、法人については、「第六章 企業と会社のしくみ」で説明します。
3.制限行為能力者とは
制限行為能力者には、未成年者のほか、成年被後見人・被保佐人・被補助人があります。
———————————————————–
(前回からの続き)
③被保佐人
被保佐人とは、精神上の障害によって事理弁識能力が著しく不十分な者で家庭裁判所の審判を受けた者をいいます(民法11条・12条)。被保佐人が一定の重要な行為、例えば借金や重要な財産の処分等をするには、保佐人の同意が必要です(民法13条)。同意なく被保佐人がこれらの行為を行った場合、被保佐人および保佐人は、取り消すことができます(民法120条1項)。また、審判により、当事者の選択した特定の法律行為について、被保佐人の申立てまたは同意を要件として、保佐人は代理権を付与されます(民法876条の4)。
④被補助人
被補助人とは、精神上の障害によって事理弁識能力が不十分な者で、申立てと本人(被補助人)の同意を条件として裁判所の審判を受けた者をいいます(民法15条・16条)。補助人には、審判により、当事者の選択した特定の法律行為について、被補助人の申立てまたは同意を要件として、代理権または同意書(同意権の対象となるのは民法13条1項に定める行為の一部に限定されます)が付与されます(民法17条1項・876条の9)。特定の行為について、補助人が同意権を付与された場合、その行為を本人(被補助人)が補助人の同意を得ないで行うと、本人または補助人はその法律行為を取り消すことができます(民法17条4項・120条1項)。