第二章 企業取引の法務
第二節 契約の成立
レベル3 意思表示
契約が成立するための要件の1つとして「意思表示の合致」が必要ですが、実際の取引の場面では、この意思表示が問題となることがあります。ここでは、意思表示が問題となる場面について説明します。
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(前回からの続き)
2.瑕疵ある意思表示
他人に欺かれたり、脅かされたりして行った意思表示には、真意と表示行為との間には不一致はありません(意思の欠缺はありません)が、効果意思の決定にあたって、表意者の自由な判断がゆがめられています。このような意思表示を瑕疵ある意思表示といい、「詐欺による意思表示」「強迫による意思表示」の2種類があります。
①詐欺による意思表示
他人に騙されて意思表示をすることを詐欺による意思表示といいます。ただ、取引にある程度の駆引きはつきものであり、そのすべてが詐欺になるわけではありません。詐欺といえるためには、取引通念上要求される信義に反するような行為であることが必要です。
詐欺による意思表示をした表意者はその意思表示を取り消すことができます(民法96条1項)。ただし、この取消しは、善意の第三者には主張することができません(民法96条3項)。